放射線基礎知識編
1 放射線にはどんな種類がありますか?
放射性物質から放出される放射線には、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線などがあり、それぞれものを通り抜ける能力が違います。
α線はものを通り抜けにくく、紙1枚や数cmの空気で止まってしまいます。
β線はα線より通り抜けやすいですが、薄い金属やプラスチックの板でさえぎることができます。
γ線はものを通り抜けやすく、鉛や厚い鉄の板などの重い金属などでないとさえぎれません。X(エックス)線と同じく電磁波の仲間ですが、一般的にはエネルギーが低いので通り抜ける能力はγ線より弱くなります。
2 放射線の単位にはどのようなものがありますか?
放射性物質の原子核はエネルギー的に不安定な状態にあり、放射線を出して、別の原子核か同じ原子核のより安定な状態に変わります。 このことを「壊変」といいます。ベクレル(Bq)は、1秒間に原子核が壊変する回数の単位で、放射線を出す能力(放射能)をあらわし、1秒間に1回壊変する場合、1ベクレルと表します。
放射性物質が壊変して、その物質の量が半分になるまでの時間が「半減期」です。
グレイ(Gy)は、放射線がある物質に当たったとき、その物質に吸収されるエネルギー量(吸収線量という)を表す単位です。
また、シーベルト(Sv)は、放射線被ばくの量を表す単位で、人体が放射線を受けたとき、その影響の度合いを意味します。
また、1分間に計測される放射線の数を「計数率」〔代表的な単位としてcpm:count per minute〕といいます。 ある物質の表面に付着した放射性物質をGM(ガイガーミュラー)式サーベイメータなどの放射線測定器で、放射線の種類やエネルギーの区別することなく放射線の数を計測するときなどにこの単位が使われます。
3 放射線に関する量(グレイやベクレルの単位で表されるもの)をシーベルトに換算するにはどうすればいいのですか?
それぞれの単位からの換算方法が決まっています。
身の回りの環境からの放射線による外部被ばく量の実効線量の評価は、空間でのあらゆる方向からの被ばく線量によるため、 原子力災害対策指針(※)では空気吸収線量率(μGy/h(1時間あたりのマイクログレイ)を測定して求めることになっています。
空気吸収線量(グレイ)から実効線量(シーベルト)を求めるには、緊急時は1グレイ=1シーベルトとして換算できるとされています。
- ※緊急時モニタリングについて(原子力災害対策指針補足参考資料)
(原子力規制庁監視情報課、2014年1月29日、最終 2021年12月21日一部改訂) - https://www.nsr.go.jp/data/000276389.pdf
さらに、食べ物などとともに放射性物質を体内に取り込んだ場合の内部被ばくは、放射性物質によって影響が異なるため、放射性物質の種類ごとに評価する必要があります。 そのため、ベクレルからシーベルトに換算するために、国際放射線防護委員会(ICRP)から示された係数(実効線量係数)を用います。そして、放射性物質の種類ごとに求めたシーベルト数を合計し、内部被ばくによる将来にわたる被ばく量を合算した数値を表す「預託実効線量」を求めます。以下の図に、それぞれの単位や換算の考え方などを図にまとめました。
4 私達の身の回りにはどんな放射線がありますか?
私たちの身の回りには、自然放射線と、人工放射線の2種類に分けて整理することができます。
(1)自然放射線
1) 大地からの放射線
大地の岩石や土にごくわずかに含まれるウラン、トリウム、ラジウム、カリウム40などの自然の放射性物質から出る放射線です。
私たちが大地から受ける放射線の種類と量は、地質等によって異なりますが、日本では年間約0.33ミリシーベルトです。
2) 宇宙からの放射線(宇宙線)
宇宙から地球に飛んでくる放射線です。
高度や緯度によって異なりますが、私たち日本人が地上で受ける量は年間約0.3ミリシーベルトです。
3) 空気中からの放射線
大地に含まれるラジウムは、放射線を出して気体の放射性物質ラドンに変わります。ラドンやその仲間は地中から空気中に拡散し、呼吸によって体内に取り込まれます。
建材として使われるコンクリートにもラジウムがいくらか含まれているので、建物からもラドンがわずかに拡散されます。 建物の密閉性、換気の回数によって、部屋の中に残るラドンやその仲間の量は違ってきます。 日本人が呼吸から取り込んだラドンなどにより受ける平均放射線量は、年間約0.47ミリシーベルトです。
4) 食物からの放射線
ほとんどの食物には放射線を出すカリウム40などが含まれています。私たちは日常生活で食物を食べることにより、体の内側からも放射線を受けています。
摂取した食物から受ける平均放射線量は、日本人では年間約0.99ミリシーベルトです。
一口メモ:カリウム40とは…放射線を出すカリウムで、自然界のカリウムに約0.01%含まれています。
(2)人工放射線
1) 医療用放射線
レントゲンやCTスキャンなどによる診断やがんの治療など医療現場で使われる放射線です。
その量は、これらの診断、治療をどれくらい受けるかによってかなり個人差があります。 例えば、胸部X線集団検診は1回あたり0.06ミリシーベルト程度、胸部X線CTスキャンは1回あたり6.9ミリシーベルト程度です。日本人が医療現場で受ける平均放射線量は、年間約2.6ミリシーベルトです。
2) 放射性降下物などからの放射線
放射性降下物とは、大気圏内の核実験や原子力施設の事故により大気中に放出され、雨やちりと一緒に地表や海に降りそそいでくる人工の放射性物質のことです。
過去に大気圏内で行われた核実験やチェルノブイリ原子力発電所事故のような原子力施設での大規模な事故により放出されたセシウム137などの放射性物質が降下物となって、 わずかに地表や海に残っています。
しかし、日本では年間0.0035ミリシーベルト程度と、自然放射線に比べてとても低い値です。
3) 原子力施設からの放射線
原子力発電所などの原子力施設からも放射線は出ています。核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)では周辺監視区域の境界の線量として、一般の公衆に対する1年間の線量が1mSv(ミリシーベルト)を超えないよう、安全基準が定められています。 実際の試算では、年間0.00008 ミリシーベルトと自然放射線と比べてはるかに少ない量に管理されています。
5 なぜ身の回りの放射線を測っているのですか?
放射線は目で見ることができません。しかし専用の装置を使うことによって測ることができます。
身の回りの放射線を測る調査は、原子力規制庁や環境省等により全国規模で行われています(全国環境放射能水準調査)。これらの調査結果から身の回りの放射線や放射性物質量の地域差がどの程度であるがかわかります。
継続して調べることにより、どのように変化しているかを知ることができ、また、核実験の実施や原子力施設の事故などが起きた場合、身の回りの放射線量を常に把握しておくことで、万が一の事態の状況を把握することもできます。
さらに、このようにして蓄えられたデータは、放射線が私たちの体にどのような影響を及ぼすかを考える上で基礎的な資料となります。
健康安全研究センターでは現在、次のような装置を使って身の回りの放射線を測定しています。
(1) モニタリングポスト
外部被ばくの影響を調べるためには、放射線(α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線など)のうち、 洋服や靴などでは遮蔽されず人体内に到達するγ線の強さを把握する必要があります。
モニタリングポストは、1年を通して24時間連続して、環境中のγ線の空気吸収線量率を測定できる固定型の装置で、検出器にNaI(ヨウ化ナトリウム)シンチレータを用い、極めて低い放射線量まで精密に測定することができます。 放射線が検出器に当たると、検出器内でかすかな光を発する仕組みになっており、 その光の信号を増幅して測定器で放射線の計数量として計測します。
(2) γ(ガンマ)線核種(かくしゅ)分析装置(ゲルマニウム半導体検出器)
γ線核種分析装置は、採取した試料の中に、どのような放射性物質がどれくらい入っているかを測るための装置です。
健康安全研究センターでは大きな採集容器(大型水盤)を屋上に置き、1か月間の雨やちりを採集して測定しています。その他、都内で採取した水、食物、土壌等も測定しています。
(3) β(ベータ)線測定装置
β線の合計量を測る装置です。放射性物質の種類を判別することはできませんが、短時間の測定で結果がわかるためスクリーニング検査として使用します。
当センターでは、降雨があるたびに平日朝9時に雨水を採水し、測定しています。
6 使用する測定機器により、空間放射線量の測定結果には違いがありますか?
放射線を測定する機器には、モニタリングポストのほかに、測定の目的・用途に合わせ、空間放射線量の測定や、人や物に付着している放射性物質(表面汚染)のチェックを簡便に行う各種のサーベイメータ、 個人が受ける放射線量の測定・管理を行う電子ポケット線量計などがあります。 サーベイメータには、放射線の検出方法の違いにより、いくつかの種類があります。 それぞれの方式で検出できる放射線の種類や放射線量の大きさなどが異なるため、 同じ場所で測定しても数値が変わる場合があります。
サーベイメータは、小型で持ち運んで測定することができますが、24時間連続的に自動測定するようには作られていません。 平常時からの空間放射線量を監視するためには、固定して常時測定できるモニタリングポストが適しています。
また、簡易な測定器では、一般的に測定誤差が大きく、測定に誤差が生じて、測定結果のばらつきが大きくなります。以下に、空間放射線量測定に使用されている機器を紹介します。
(1) シンチレーション式サーベイメータ
シンチレーション式サーベイメータは空間放射線量率(1時間当たりの空気吸収線量率)を測定します。 測定値の正確さではモニタリングポストに劣りますが、持ち運びができるので、任意の場所で測定することができます。機種によっては、Gy(グレイ)とSv(シーベルト)の両方の単位で測定ができます。
モニタリングポストと同じ空気吸収線量率(μGy/h(1時間あたりのマイクログレイ)を表します。緊急時は、測定結果を1Gy=1Svで換算して実効線量を求めます。
人の被ばく線量を測定する目的で、1cm線量当量率という値で放射線量(単位はμSv/h(1時間当たりのマイクロシーベルト)という値で放射線量を表示します。(※)
単位はa)で説明したSvと同じですが、1Gy=1Svで換算して求めた実効線量とは異なるものです。
- ※緊急時モニタリングについて(原子力災害対策指針補足参考資料)
(原子力規制庁監視情報課、2014年1月29日、最終 2021年12月21日一部改訂) - https://www.nsr.go.jp/data/000276389.pdf
(2) GM式サーベイメータ(いわゆるガイガーカウンター)
GM式サーベイメータは、1分間(または1秒間)に、検出器に当たった放射線の数を数えます。 機種によっては、β線をγ線と区別なく数えるものや、検出器をアルミで覆いβ線を遮蔽することにより、γ線を数えるものなどがあります。 測定結果はそのままcpmやcps※で表示されるものと、cpm等をSvに換算して表示されるものがあります。
GM式サーベイメータは、主に、人や物に付着した放射性物質(表面汚染)の測定に使われます。
GM式サーベイメータで空間放射線量を測定する場合は、検出器をアルミで覆うことが重要です。アルミの覆いがないとβ線が遮蔽されないので、測定結果が実際よりも高くなる傾向があります。
同様に、一般に市販されている小型のGM式サーベイメータのうち、β線を遮蔽する機能が十分でない機種では、放射線量が低い場所を測定した場合、自然放射線の中でエネルギーが高いβ線も計測されます。 そのため、計測結果(cpm等)からSvに換算して表示する機種では、 数値はシンチレーション式サーベイメータによる測定結果より高くなる可能性があります。
※cpm(count per minute)は1分間に計測した放射線の数、cps(count per second)は1秒間に計測した放射線の数です。
GM式サーベイメータ(TGS-146B)
日立アロカメディカル(株)
(3) ポケット線量計
一般的に小型の携帯用線量計の総称として使われています。測定の原理はシンチレーション式サーベイメータと同様のもの、GM式サーベイメータなどと同様のものなど、機種によりさまざまです。
個人が受けるγ線やX(エックス)線などの放射線量を測定するための機器で、医療従事者や放射性物質を取り扱う従事者などが、一定期間に受けた放射線量(積算線量)を知るために用います。
標準的なものは、1マイクロシーベルトのレベルで測定が可能です。身に着けて簡便に取り扱え、その場で被ばく線量を読みとることができます。
富士電機(株)
高性能個人被ばく線量計 DOSEi―γ
富士電機(株)
* 検出器は、シリコン半導体検出器を使用
7 身の回りの放射線の測定結果はどうなっていますか?
(1) 都内の状況
図1は健康安全研究センター(新宿区)における2021年のモニタリングポストによる測定結果です。それぞれの縦線は1日ごとの最小値から最大値を表しています。
この図1で放射線の量がゼロでないのは、大地や空気中にはわずかながらも放射性物質が常に存在し、それらが測定されるためです。 またときどき縦線が飛び出しているのは、放射線の量が天気や気象条件によって変化することがあるためです。
大気中にある自然の放射性物質を含むちりは、雨が降ると雨と一緒に地表に落ちてきます。このため、雨の日は放射線の量が多くなることがあります。 また、地表から大気中に広がっていくラドンは、雨に邪魔され広がることができませんので、雨の日に放射線の量が上がる原因になります。黄砂などによっても放射線量が上がることがあります。
逆に雪が積もると、雪によって地表からの放射線がさえぎられるため、値が低下することがあります。
(2) 全国の状況
西日本は東日本に比べて、放射線量が高い傾向にあります。 これは、西日本の地質が東日本の地質に比べてウランやトリウム、ラジウムなどの自然の放射性物質を多めに含む花崗岩(かこうがん)が多いため、大地からの放射線の量が多くなるからです(図2)。
μSv/h(マイクロシーベルト/毎時)
平常時 | 測定結果(一日の平均値) | ||
---|---|---|---|
平成23年3月15日※ | 平成23年7月1日 | ||
東京都新宿区 | 0.028~0.079 | 0.144 | 0.059 |
岐阜県各務原市 | 0.057~0.110 | 0.061 | 0.061 |
鳥取県東伯郡 | 0.036~0.110 | 0.067 | 0.065 |
山口県山口市 | 0.084~0.128 | 0.092 | 0.090 |
財団法人日本分析センター『ようこそ「日本の環境放射能と放射線」へ』より改編
(3) 世界の状況
2008年の原子放射線の影響に関する国連科学委員会の報告書によると、世界全体の自然放射線の年平均線量は1~13(平均2.4)ミリシーベルトです。
8 身の回りの放射線はここ数十年でどのようになっていますか?
図3は、雨やちりなどの降下物に含まれる人工放射性物質の1つであるセシウム137の、日本における毎月の降下量の経年変化を表したものです。 縦軸の目盛りは、1つ上がるごとに10倍になっています。
1950年代後半から1960年代前半には大気圏内で核実験がさかんに行われました。この結果、これらの核爆発でできた人工放射性物質が大気中に広がり、雨やちりと一緒に地表に降り続けました。 大気圏内核実験は1980年を最後に行われなくなり、地表近くの人工放射性物質は少しずつ減ってきています。1986年にチェルノブイリ原子力発電所事故が起こりました。 この事故でセシウム137を始めとする人工放射性物質が環境中に放出され、一時的に日本でもセシウム137などの降下量が高くなりました。 しかしその後すぐに元に戻り、近年(福島第一原子力発電所の事故前)は1963年当時の約1/1000程度となっています。
なお、2011年3月12日に発生した福島第一原子力発電所の事故により、3月22日にセシウム137の値は5,300Bq/㎡となり、同年3月の放射性物質の降下量は過去最大を記録しましたが、 その後低下し、5月15日以降は、毎日の降下物の測定では概ね、不検出の状況が続いています。
財団法人日本分析センター『ようこそ「日本の環境放射能と放射線」へ』より改編
9 現在ホームページで公開されているデータを計測している場所はどのようなところですか?
環境放射線量は、都内8か所に設置したモニタリングポストで計測しています。
降下物は健康安全研究センターの屋上(地上約22m)に設置された大型水盤で採集し、蛇口水は敷地内の水道直結管から採取し、いずれもゲルマニウム半導体検出器を使用して計測しています。
10 測定場所により測定された数値の違いはありますか?(空間放射線量の測定の高さによる違いについて)
以下の理由から、測定する場所の周辺環境の違いにより、測定値が異なる場合があります。
(1) 高い建物の傍などでは、建物によって空気中からの放射線が遮断される一方、建物のすぐ傍ではコンクリート等建材などからの放射線の影響を受けるためです
(2) 測定場所の地質や地表面の降下物、樹木や建物等の有無などの周囲の環境によって、それらに存在する天然及び人工放射性物質の影響を受けるためです。
東京都健康安全研究センターが、屋上面や地表面など高さの違う場所で測定した結果では、モニタリングポストの測定値とほぼ変わらない値でした。
※ モニタリングポストを設置していた建物の解体工事に伴い、2013年7月に、これまで設置していた 建物の屋上(地上約18m)から隣の建物の屋上(地上約22m)への移設を行いました。 その後、健康安全研究センター敷地内の工事が2017年3月に完了したため、モニタリングポストを地上1mに移設しました。
11 「被ばく」の影響をどのように考えればよいのですか?
被ばくとは、放射線を受けることを言います。放射線の発生源(線源)が体外にあって放射線を受ける場合を「外部被ばく」、食物や傷口から体の中に取り込まれた線源から放射線を受けることを「内部被ばく」といいます。
そして、放射線被ばくの人体影響のあらわれ方は、放射線の種類(α線、β線、γ線)やエネルギーによって異なります。 また、放射線を受けた人の組織・臓器によっても影響の程度は異なります。 そこで、放射線の種類や組織・臓器ごとの影響を考慮し、組織や臓器ごとに発がんの起こりやすさによって決められた係数をかけたものを合計し、人体へ及ぼす影響としたものを実効線量(単位はシーベルト)と言います。 つまり、実効線量 が同じであれば、放射線の種類、放射線の受け方(外部被ばく、内部被ばく)、さらに自然放射線か人工放射線かの違いなどに関わらず、人体に及ぼす影響は同じと判断できます。
12 放射線量の基準はありますか?
国際放射線防護委員会(ICRP)が2007年に勧告を出しており、その中で、 一般の人についての放射線量の指標を3つの範囲で設定しています。 緊急時は20~100ミリシーベルト、緊急事故後の復旧時は年間1~20ミリシーベルト、平常時は年間1ミリシーベルト以下とされています。
国の原子力規制委員会も、この勧告を踏まえた考え方を示しています。
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9498833/www.nsr.go.jp/archive/nsc/info/bougokijun.pdf
【国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)】
13 放射線量について:1ミリシーベルトの持つ意味は?
国際放射線防護委員会(ICRP)による2007年の勧告では、平常時における、一般の人に対する年当たりの線量限度値が1ミリシーベルトです。 これは、一般の人が受ける原子力施設からの人工的な放射線の量をなるべく低く抑えて管理しようとするための指標であり、健康に影響を及ぼすか否かを示すための基準ではありません。 この指標値には、年間2.1ミリシーベルト(日本平均)の自然界からの放射線量や医療行為によって受ける放射線量は含まれていません。
国は、平常時のモニタリングとして、原子力施設の周辺住民等の健康と安全を守るため、環境における原子力施設に起因する放射性物質又は放射線による周辺住民等の線量が年間1ミリシーベルトを十分に下回っていることを確認し、その結果を周辺住民等に提供することとしています。
また、同じICRPによる2007年の勧告では、事故収束後の復旧期における一般の人の放射線防護の基準値(参考レベル)を1~20ミリシーベルトとしており、その下限値でもあります。
14 放射線量について:20ミリシーベルトの持つ意味は?
国際放射線防護委員会(ICRP)による2007年の勧告では、事故発生等の緊急時における一般の人の放射線防護の基準値を20~100ミリシーベルトとしており、その下限値です。 この値を考慮して、2011年3月の福島第一原子力発電所の事故発生の際に、国は、1年の期間内に積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれのある区域を「計画的避難区域」に指定しました。
また、同じ国際放射線防護委員会(ICRP)による2007年の勧告では、事故収束後の復旧期における、一般の人の放射線防護の基準値を1~20ミリシーベルトとしており、その上限となる値でもあります。
15 放射線量について:100ミリシーベルトの持つ意味は?
短期間での被ばく量が100ミリシーベルトを超えると、線量の上昇とともにがんのリスクが高まることが分かっています。100ミリシーベルトを超えない範囲では、放射線が有意ながんを引き起こすという科学的な証拠は確認されていないと説明されています。